01_三重県熊野
製作者 :
所在地 :
建設時期 :
竹の伐採本数:
農業従事者
三重県熊野市
2012年12月(熊野BGH1号)、2013年1月(熊野BGH2号)
孟宗竹150本
バンブーグリーンハウスを作ろうと思ったきっかけは?
三重県紀州地域(熊野市,南牟婁郡御浜町,紀宝町)では、消費される野菜の多くを地域外からの流入に頼っており、地域内での生産は小規模兼業農家による露地栽培と小規模経営体による施設栽培が点在するのみである。同地域は急峻な山間地形により小規模不整形なほ場が多く,施設が高コストとなるため、施設栽培の普及が進んでいない.
2012年10月に地域内で農産物直売所が整備されたことを契機として、年間を通して計画的な多品目生産を行うことで農業経営を安定させるとともに、新鮮な野菜を地域内の消費者に安定供給する地産地消を推進するため、安価で農業者による自家施工が可能な農業用ハウスの開発及び同施設を活用した栽培体系の確立に取組むこととなった。
BGHを製作する中で苦労した点、工夫した点はありますか?
本事例では、既存の構造とは異なる新たなBGHの構造を検討、制作した。構造の開発にはほ場条件や営農条件を加味し、綿密な工夫、検討、計画が必要となるため、製作までの開発、準備作業に多大な時間を要した。今後、BGHを製作する場合は、既存の構造を適用するまたはそれらを参考にした構造とすることが省力的であると考えられる。
また、竹材の調達についても、竹林からの切り出し作業に時間を要し、危険も伴う。そのため、行政や住民自治区等が行う公共の竹林整備(生活環境改善)事業と連携し、未利用資源である竹材を有効利用するなど、地域の課題解決と連携するよう工夫することで部材の調達コストを低減することも可能であると考えられる。
BGHの使用状況(ハウスの利用、耐久性等)を教えてください。
建設後、約5年が経過したが大規模な部材の破損等は観察されておらず、強風等による破損被害も受けていない。この間、最寄りの観測地点(気象庁)で観測された最大瞬間風速は23.2 m/s、20 m/sを超える強風は3回観測されていた。一方、本事例は無積雪地帯において実証に取組んでいるため、耐雪荷重については未検討である。
部分的な破損については、被覆資材の破れにより雨漏りが生じ、部分的に竹材の腐敗が認められているが、部材の交換等で対応可能である。
冬季にハウス内の気温を調査したところ、日平均気温は2.8~4.3℃、日最高気温は4.9~11.1℃外気温と比較して高くなった。また、日最低気温も外気温より高く推移する傾向がみられた。
栽培品目は、夏季は果菜類の促成栽培、冬季はハウス内に保温トンネルを設置して葉菜類の無加温二重被覆栽培に取組むことで生産性の向上を実現している。
これからBGHを作る人へアドバイスをお願いします。
BGHは、通常のパイプハウスと比較して建設に多くの作業時間を要するため、既に営農体制を確立した農業者が規模拡大に際し、低コスト化を期待して取組むと営農作業の妨げとなることが懸念される。そのため、就農準備段階にある新規就農者や定年帰農者が取組むことを推奨すべきと考える。また、複数名での作業協力が可能な集落営農組織での取組みも考えられ、集落における共同の水稲育苗施設として活用することも考えられる。その他、規格化されたパイプ資材を使用する場合と比較して、ほ場条件や営農条件を考慮した仕様とすることができ、建設後の改造も容易である。
ただし、耐候性については定量的に保障されたものではなく、施工は自己責任にならざるを得ない。
竹材の調達については、行政や住民自治協議会等が行う竹林整備事業で生じる未利用材の活用に努めるなど、地域の実状に併せて低コストで調達できる方法を検討する必要がある。
長野伸悟
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